第1章 剣道指導者が知っておくべき心構え
竹刀にみる剣道の理念
剣道指導者がまず理解すべきは、竹刀が持つ本意と剣道の理念です。剣道は単なるスポーツではなく、「剣の理法による人間形成の道」とされており、これは竹刀の扱い方からも学ぶことができます。
竹刀はその名の通り日本刀を竹で模して造られたものです。したがって剣道においては、それは刀と同じであり、自分の分身ともいえる存在ですので、粗末に扱うことはもちろん、他人の竹刀を勝手に触ったり、跨いだりすることは大変失礼な行為になります。竹刀は相手と自分を結ぶ重要な道具であり、これを通して「心気力一致」を目指します。ものを大切にする心、相手を敬う心、竹刀をはじめ道具の扱いにおける所作。この心と体の統一を図る修錬こそが基本であり、青少年の成長に役立つ大切な指導の基礎となります。正しい竹刀の扱い方を伝えることで、剣道の伝承と発展を支えることが指導者としての使命でもあります。
礼法教育と人格形成の重要性
剣道は対人競技ですので、特に礼法は非常に重要な要素であり、相手の人格を尊重する姿勢を育むものです。特に少年剣道の指導においては、ただ勝負に勝つことを目的とするのではなく、「心豊かな人間をつくる」ことが指導の大きな役割です。礼法を教えることで日常生活態度の改善や規範意識の養成が期待でき、これは子どもたちが社会に出た際にも役立つ教えとなります。また、剣道の礼法を通じて「交剣知愛」の精神を広げ、仲間との結びつきを深める経験を提供することも大切です。
子どもたちに伝える「剣道の目的」と心構え
少年剣道を指導する上で、まず子どもたちに剣道の目的をわかりやすく伝えることが必要です。その目的は勝敗に固執するのではなく、「剣道を通じて人間をつくる道」であることを教えることが求められます。また、「正しい努力を積み重ねることの大切さ」や、「相手を敬う心」の重要性を伝え、これらが剣道修錬の根幹であることを指導において繰り返し説いていくべきです。このような心構えを育てることが、彼らの成長に繋がる指導案の基盤となります。
指導における言葉遣いと正しい接し方
少年剣道を教える指導者にとって、適切な言葉遣いや接し方は極めて重要です。子どもたちは指導者の言動から多くを学ぶため、指導者は自らが模範となるよう心がけましょう。特に、丁寧で前向きな言葉を使い、「できない部分」ではなく「できる可能性」に焦点を当てた指導が効果的です。また、一人ひとりの特徴やペースを理解し、個々に合った指導法を工夫することで、より良い学びの環境を提供できます。適切な言葉遣いと柔軟な接し方は、子どもたちの自信を伸ばし、人間形成にも役立ちます。
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