第2章 実技力向上のための稽古法
切り返しの練習で鍛える基礎技術
切り返しは剣道の基本中の基本です。この稽古を通じて、正確な太刀筋、相手との気合の掛け合い、そして体力や持久力を鍛えることができます。切り返しの際には、竹刀の中心線を意識しながら、相手の防具に対して正確に当てることが求められます。また、気迫や拍子も重要ですので、常に全力で取り組み、稽古の初めと終わりに取り入れるのが効果的です。五段への昇段審査においても、切り返しの質が実技の基礎となるため、日々の稽古で技を磨くことが合格への近道となるでしょう。
木刀による基本技稽古法の活用
昇段審査における立ち合いは、試合とは異なり、たくさん有効打突が出来たとしても、正しい構え、正しい姿勢で打てていなければ、審査員から評価をもらうことは難しくなります。そこで実践していただきたいのが「木刀による基本技稽古法」です。この稽古法は、竹刀の稽古とは異なる観点から技術の向上を目指す方法です。だた、1級を取得後は、この「木刀による基本稽古法」をやる機会もほどんどないという方も多いのではないでしょうか。しかし、この稽古法では、姿勢や体の使い方、力の伝え方を細かく確認できるため、五段審査においても、基礎を再確認することができます。例えば、面打ちや胴打ちなどの基本攻撃を、正しい足さばきとともに稽古することで、合理的な動作や美しいフォームが身につきます。木刀稽古は、一人で行うことも可能ですが、指導者や稽古仲間と行うことで、互いにフィードバックを与え合うことができ、より効率的な習得が可能になります。毎回の稽古の最初に取り入れてみることをおすすめします。
相手の呼吸と間合いを意識した地稽古
「始め！」がかかってから、「発声」「間合いを詰める」「機を狙って打ち込む」「残心」だけではなかなか合格は出来ません。「発声」は相手の気勢をさらに上書きするような充実した気勢が必要です。「間合いを詰める」際には、相手よりも少しでも先に自分の打ち間に攻めて、先をとることが大切です。「機を狙って打ち込む」わけですが、勝手に攻めこんで、勝手に打っていったのでは、仮にそれが有効打突になったとしても、余り良い評価は得られません。相手よりも先に打ち間に入った瞬間の相手の動きを瞬時に見る「溜め」が重要なポイントになります。例えば、先に打ち間に攻めたところ、相手が居付いたと感じ取れた場合は、思い切って面に飛び込む。手元が上がりそうなときは小手を狙う。また、攻めたところ、相手が慌てて打ってきたという場合は、応じ技で落ち着いて捌きます。
実際はいろんなパターンがありますので、攻めて打つという事に意識をしすぎて、逆に自分が居付いてしまったり、出遅れてしまうこともあると思います。ですので、地稽古では互いの呼吸と間合いを意識しながら稽古を行うとよいでしょう。攻撃のタイミングを合わせる「合気」を意識した稽古が重要なポイントでもあります。特に初太刀～二本目までの組み立てをイメージした稽古は、立ち合い審査のシミュレーションとしてかなり有効です。自分の得意な間合いだけに固執せず、対戦相手が多様な剣風を持つ場合に備え、習熟度の異なる相手とも積極的に稽古を行いましょう。これにより、自分の攻撃パターンに偏りが出ないよう稽古することができます。
課題となる応じ技の習得方法
五段審査では、攻撃技のみならず、相手の技への対応力、いわゆる応じ技も審査の重要なポイントになります。応じ技とは、例えば、相手の打ちに対する「出鼻技」や「抜き技」、「返し技」、「擦り上げ技」などを指します。これらの技を自在に使うためには、まず相手の動きを正確に読む力を身につけることが必要です。先を仕掛けた際の相手の竹刀や目線の動きの変化、呼吸の乱れを注意深く観察し、出てくる技に対して瞬時に応じる稽古を繰り返すことが効果的です。重要なことは「先を仕掛ける」という点です。相手が打ってくるのを待っていて、それに合わせた応じ技を出したとしても、それは全く評価されないという事を覚えておきましょう。また、実戦的な場面を想定した地稽古や模擬試合を通じて、応じ技を習得し、自分の剣道スタイルに馴染ませていきましょう。繰り返しの実践が、自信を生み、昇段審査での合格率を大きく向上させることに繋がります。
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